東京・ミニシアター生活

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【7/27公開】『隣の影』喜劇か悲劇か? 隣人トラブルがヒートアップする狂気の北欧サスペンス!

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陽の光が貴重なアイスランドで、一本の木が作った影がきっかけで勃発した隣人トラブル。些細な感覚のズレは、やがて血で血を洗う争いへ…。ブラックコメディとも悲劇ともとれる緻密なサスペンス。今年『たちあがる女』(2019年3月日本公開)を放ったアイスランドから、またも切れ味鋭い、注目の作品が登場した。

2019年7月27日(土)よりユーロスペースほか全国順次ロードショー

明日、わが身にも起こりうる隣人問題だが…

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日々日本のニュースにも取り上げられる”隣人トラブル”。「引っ越したら、運悪く隣家にサイコパスが住んでいた」といった設定も、ホラー系作品によく見られる。

自分に降りかかれば最悪。それが、明日にもわが身に起こる可能性をはらんだ”ご近所トラブル”だ。あるいは今現在、まさにお悩み中、という方もいるのではないだろうか。

隣人問題は身近な題材ゆえに、ドラマチックに仕立てるにはかなりの手腕が必要だろう。しかしそこを逆手にとって、見事な腕前をみせたのが、本作の脚本・監督であるアイスランド出身のハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン。アメリカの雑誌『バラエティ』で”最も期待される10人のヨーロッパの監督”に選ばれたことがあるという。

カウリスマキ兄弟やラース・フォン・トリアーら、著名な監督のみならず、これまでもサスペンス系作品でたびたびスマッシュヒットを飛ばして来た北欧映画界。その中でも、ハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン監督は、ニューウェーヴとして注目すべき人物なのだ。

小さな”たまたま偶然"が重なる緻密な展開

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二者の間にあったギリギリ「見えないふり」ができる範囲だった問題に、不用意にどちらかが一歩踏み出すことで、もう一方の”内なる地雷”にカチッとスイッとが入り爆発することがある。

やがその内なる衝撃が、小さなほころびのように表に姿を現し始める。そして少しずつ”こじれのキャッチボール”が交わされ、一度もつれ始めると、どんどん加速し、収拾がつかなくなっていく。

本作のこの仕掛けは絶妙だ。トラブルになる2つの家庭のうち、老夫婦の家の方には、もともと過去に起きた悲劇が、大きな影を落としていた。そして隣家には「老夫婦の悲劇の歴史」を知らない女(あるいは知っていても、他人の背景を気にかけないタイプだろう)が、後妻に入っている。この状態から始まった 無邪気な敵意の前に、抑圧されてきた悪意は爆発するしかなくなってしまう。

2つの家の関係は、それぞれが動物を飼っていたことも影響し、さらにこじれていく。誰も見ていないところで、犬が自由に険悪な隣家の庭を走り回る姿には、つい笑いが漏れてしまう。こうした皮肉なシーンも、巧みに挿入されている。

ストーリーのすそ野を広げる、もう1つの家庭

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この作品の舞台となる戦場は2軒の隣り合った家の敷地であり、2組の夫婦の対立が主として描かれるのだが、冒頭から、もう1つの家庭が関わっている。

老夫婦の次男が、件の家のうちの1軒である実家へと、出戻ってくるのだ。次男はすでに新たな家庭を構えているが、夫婦の事情で住まいを追い出されてしまう。この”事情”も他人からは見れば笑えるが、当人の夫婦の身になれば、そこそこ深刻な問題だったりする。この次男夫婦を加えた、3つの家庭、6人の人間模様が交錯する。

それぞれの「日常が侵食されることへの小さな苛立ち」という火種は、雪だるま式に確実に(あるいは一気に)膨らみ、やがて尊厳や自制心を奪われる怒りまで、ヒートアップしていく。業火が燃え上がった後には、クライマックスとなる身も凍る惨劇が繰り広げられる。

作品ニュース

数々の映画賞を受賞! 米国アカデミー賞への代表にも

本作は、本国の「アイスランド・アカデミー賞」で、作品賞、監督賞、脚本賞、男優賞、女優賞、助演女優賞、視覚効果賞と7部門を受賞(そのほかの受賞歴は末尾に記載の通り)。

さらに米国アカデミー賞2018 外国語映画賞 アイスランド代表にもなっている。その他にも数々の映画賞を受賞し、世界の映画祭にも出品されている、注目度の高い作品だ。

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『映画秘宝』からも評価

すでに映画関係者から、数々のコメントが寄せられている本作。

コアな映画ファンに人気の映画雑誌『映画秘宝』でも真魚八重子氏により「最新型・厭なスリラー」として紹介されている。

 

オススメしたい『隣の影』

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  • 明日は我が身”隣人トラブル”がテーマ
  • 憎悪がこじれていく丁寧な仕掛け
  • 「タガが外れる瞬間」数々のパターン
  • 手加減なしのバイオレンス描写
  • 観客に託される「悲劇か、喜劇か」

登場する6人は、どこかで見かけたようなリアルな人物ばかり。真面目な人、調子がいい人、思慮深い人…さらにそれぞれの人物にも多面性がある。執念深さ、大胆な思考、家族への思いやり、おバカな性欲…。どの人物にも、愛すべき側面を感じさせる。

そんな6人が絡み合い、事態は複雑かつ深刻に発展する。ブラックユーモアとして楽しむか、悲劇として受け止めるか。後に残る味は、観る者によってさまざまに変わるだろう。

『隣の影』作品情報

【あらすじ】
アイスランドのとある街でマンション暮らしをしていたアトリアとアグネス夫妻。しかし夫アトリアの失態により、突然夫婦の関係が壊れてしまう。マンションを追い出される形でアトリアは、郊外に住む年老いた両親インガとバルドウィンの家に転がり込む。

しかし、一見静かな実家でも、実は隣家のとの間に小さな諍いが生じていた。インガとバルドウィンの家にある大きな木が、隣の家のポーチに影を作っていたのだ。

それをストレスに感じた隣家の中年夫婦、エイビョルグとコンラウズが不満を訴えると、老父バルドウィンは応じようとするが、老母のインガは「あの木には触れさせない」と猛反対。さらにインガは、日頃の苛立ちを爆発させて…。

監督・脚本:ハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン
出演:ステインソウル・フロアル・ステインソウルソン、エッダ・ビヨルグヴィンズドッテル、シグルヅール・シーグルヨンソン、ラウラ・ヨハナ・ヨンズドッテル ほか
原題『Undir Trénu』 英題『Under The Tree』

撮影:モニカ・レンチェフスカ 編集:クリスティアン・ロズムフィヨルド
音楽:ダニエル・ビヤルナソン
配給:ブロードウェイ
2017年/アイスランド・デンマーク・ポーランド・ドイツ/氷語/カラー/89分/DCP
2019年7月27日(土)よりユーロスペースほか全国順次ロードショー
2017(C)Netop Films. Profile Pictures. Madants

rinjin-movie.net-broadway.com

 

【『隣の影』受賞歴】
●アイスランド・アカデミー賞(Edda Awards)では、作品賞、監督賞、脚本賞、男優賞、女優賞、助演女優賞、視覚効果賞/ファンタスティック・フェスト2017監督賞長編コメディー部門受賞/ダブリン国際映画祭2017撮影賞/デンバー映画祭2017出品クシシュトフ・キェシロフスキ賞(最優秀作品賞)受賞/インターナショナル・コンペティション部門作品賞スペシャル・メンション受賞/ハンプトンズ国際映画祭2017出品長編ナラティヴ作品賞受賞
●米国アカデミー賞2018 外国語映画賞 アイスランド代表

【『隣の影』出品先】
ベネチア国際映画祭2017 Orizzonti部門出品/SKIP国際Dシネマ監督賞201/トロント国際映画祭2017 CONTEMPORARY WORLD CINEMA部門出品/チューリヒ映画祭2017出品/シカゴ国際映画祭2017出品/ミドルバーグ映画祭2017出品/バリャドリッド国際映画祭2017出品/フィラデルフィア映画祭2017出品/ライデン国際映画祭2017出品/テッサロニキ国際映画祭2017出品/パームスプリングス国際映画祭2018出品/パームスプリングス国際映画祭2018出品 

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