東京・ミニシアター生活

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【7/26公開】『よこがお』深田晃司監督×筒井真理子 ある事件をきっかけにすべてを奪われた女、その復讐と再生

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1つの事件をきっかけに、人生の不条理に飲み込まれ、すべてを奪われてしまったある女性の人生。ささやかな復讐を決意し、過去を捨て名を変えて、異なる横顔を見せた女の、波乱と苦悩に満ちた肖像を描く。第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門の審査員賞を受賞した『淵に立つ』の深田晃司監督と女優・筒井真理子が、再びタッグを組んだヒューマンサスペンス。

2019年7月26日(金)角川シネマ有楽町テアトル新宿 ほか全国公開

誠実に生きてきた女に仕掛けられた、どん底スパイラル

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美容師の青年・米田に、策略を持って近付こうとする謎の中年女性・リサ。素性の知れない彼女は、何かを得ようともがいているようだ。それが何なのかは、彼女の過去とともに徐々に明かされていく。

リサと名乗る女の正体は、元介護士の”市子”。献身的に尽くす性質で周囲の信頼を集め、自分を取り巻く小さな社会に奉仕していた。そしてもう少しで、ささやかな幸せをつかむところだった。

しかし不運な偶然と、ある事件により、すべてが崩れ去り、世間から非難の刃を向けられることになっていく。さらに追い討ちをかけるように、身近な人物によって状況はかき乱され、市子はどん底に落とされていってまう…。

一度壊れて、以前とはまったく違う顔を見せることになる市子。彼女はどんな過程でそんなにも変わったのか? その心理の移り変わりを味わうことができる緻密な作品だ。

メタファー溢れる演出とカメラワーク

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サスペンスタッチの展開に、演出もスリリングな本作。時折、違和感を感じるカメラワークが意図的に挟まれたり、間(ま)が残されたりする。夢や幻想が織り込まれたり、市子(リサ)の髪色が状況により変化する。それらが意味することがなんであるかは語られず、ぼんやりとした異物感がそこここに溢れている。

現実の世界で私たちが体験する、夢、あるいはささやかな妄想は、説明しきれない不安定さを伴うものだ。そして本作に登場するガザガサとした違和感の数々は、その正体不明加減が絶妙だ。

少しずつ異物感が織り込まれることで、観る者の心理にじわじわボディブローのような不安感が効いてくる。何かを見過ごしてはいないか、 気づくべきことを、自分はなきことにしてはいないか、と。そして、鈍く忍び寄る不穏さが、少しずつ浸透・蓄積していく。こうした感覚が敏感である観客にとって、本作は想像力を激しく掻き立てられる作品となるだろう。

「無実の加害者」が生きていく道とは

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市子が転落するきっかけは、ある事件への意図的な関与を疑われたことにある。マスコミに騒がれ、あることないこと世間に晒される恐ろしさ。そして外部から受ける攻撃だけでなく、隠し事をしたことをきっかけに、内側からも自ら弱っていく市子を、さらに追い詰める身近な人物が現れる。

状況が整えばマスコミや世間を利用して、自分の手を汚さずとも致命的な打撃を与えることができる。愛憎ゆえの裏切りは、ある種のストーカー行為のようだが、計算づくではないだけに、当人も予期していなかった方向へと、市子を導いてしまう…。

世界は決して思い通りにならないものだ。誰もが、理不尽な目に遭い、絶望のふちに追いやられることがあるかもしれない。絶望の淵に立たされても生きていく道はあるのだろうか。遠回りし、叫び声をあげながらも、救済する力を自らに見い出す…そんな1つの道しるべのような物語だ。

作品ニュース

劇中の日本画、原画を展示

劇中に登場する日本画が、テアトル新宿にて展示される。

 


深田晃司監督インタビュー動画

深田晃司監督へのインタビューが行われた模様。配信は7月18日(木)から。どんな内容になっているのか、気になるところだ。

 

オススメしたい『よこがお』

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  • 女性の目線でとらえられた世界観
  • 「無実の加害者」とは何者なのか
  • 数々のメタファーらしき存在
  • 壮絶な展開の先に見える希望
  • キャストが新たに見せる顔

じっくりと集中して、入り込んで観られる作品だ。どの出演者もリアルな演技をみせるが、ハマり役を与えられたというより、内側から新たな顔を引き出されたかのようだ。

俳優のポテンシャルを引き出す力、そして女性の立場を深い理解で映し出す、深田監督の鋭い視点に驚かされるだろう。

また、過剰なマスコミ報道の恐ろしさ、情報に振り回される大衆の愚かさや残酷さについても描かれており、加害者のみならず、被害者やその家族たちの日常にどれだけ影響を及ぼすのかという社会的テーマも盛り込まれている。

『よこがお』作品情報

【あらすじ】
周囲から厚く信頼されている訪問看護師の市子。訪問先の中でも大石家とは特別親しく、介護福祉士志望である娘たちの勉強もみてやっていた。そんな中、大石家の次女で学生のサキが行方不明となる事件が起こってしまう。事件はほどなく解決するも、捕らえられた犯人は、意外な人物だった。

やがて事件関与を疑われた市子は、現実を捻じ曲げられ、周囲の信頼も、仕事も、大事な人間関係も失ってしまう。行き場を失った市子は、やがて”リサ”と名乗って、ある目的をもって行動を始める…。

脚本・監督:深田晃司
出演:筒井真理子、市川実日子、池松壮亮、須藤蓮、小川未祐、大方斐紗子、吹越満 ほか
配給:KADOKAWA
<2019年/111分/カラー//日本=フランス/5.1ch/ヨーロピアンビスタ>
2019年7月26日(金)角川シネマ有楽町テアトル新宿 ほか全国公開
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