東京・ミニシアター生活

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【5/15公開】『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』“東ドイツのボブ・ディラン”と愛されながら、秘密警察に通じていた男の苦悩

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東ドイツのシュタージ(秘密警察)に協力していた、伝説のシンガー・ソングライター、ゲアハルト・グンダーマン。その矛盾と葛藤に満ちた半生を、2つの時間軸を行き交いながら描く話題作。主演俳優が自ら歌う グンダーマンの心に沁みる楽曲を織り込み、率直ゆえにいくつもの矛盾と秘密を抱え、悩みながら懸命に生きた男の軌跡を追う。

 2021年5月15日(土)より渋谷ユーロスペース他全国順次公開

統一前の東ドイツと、統一後のドイツをまたいで生きること

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1989年にベルリンの壁崩壊。東西統一後も、肉体労働の傍ら、音楽活動を続けたグンダーマンは、労働・家族・環境問題などをテーマに、さまざまな想いをを自らの歌声に乗せ、人々に届けていた。心に響く楽曲は彼の温かい人柄とともに、多くの人に受け入れ愛されていた。グンダーマンのバンドは、ジョーン・バエズやボブ・ディランら、一流ミュージシャンの前座を務めることもあった。

しかしその裏で、グンダーマンは20代の頃いっぱいという長きにわたり、シュタージ(秘密警察)に協力していたという重い過去の秘密を抱えていた。そして、東西統一で国が大きく変化すると、本人が望むと望まざるに関わらず、そうした事実は表に漏れ出すようになっていく。

「グンディはシュタージに命じられるがまま、自分を監視・報告をしていた」……その事実を知った知人・友人からは、個人的に恨まれ憎まれる。ところが、皮肉なことにグンダーマン自身も、監視していると思っていた友人から逆に監視されていたことを知り、ショックを受ける。

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20代で旧東ドイツの体制や組織に翻弄され、何が正しいのか間違っているのかもわからぬまま行動してしまった責任を、30代で問われる。なんなら、逆に裏切られていたことまで知る。この時代、東ドイツで青年期を過ごした人の多くが、似たようにな運命に見舞われているのかもしれない。ちなみにシュタージの非公式協力者は、1970年代の半ばがピークで、その頃は20万人に達していたという。

30代になって過去を振り返ったグンダーマンは、どのような結果になるかを考えず、誘われるままにシュタージに協力し始めた愚かさを後悔する。20代の若気の至りだったと非を認めるものの、自分がどんな報告をしたかという記憶は曖昧だ。そして「重大なことは報告しなかったはずだ」と考える。だから大した影響はないはずだ、と思いたいが、人々が自分に向ける怒りは強烈だ。

矛盾に満ちたグンダーマンのリアルな人物像と見事な歌声

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グンダーマンの場合、状況はより複雑だ。状況をさらに苦しくしている要因が他にもあるのだ。成り行きから生まれた、父との間にある確執。街で出会っても父は声すらかけてくれない。

そして、友人の妻・コニーが、グンダーマンの最愛の女性であることも重大な問題だ。子どもも生まれて幸せそうな家庭を育んでいるにも関わらず、情熱に突き動かされたグンダーマンは、ついに彼女を略奪してしまう。

愛ゆえに優しさゆえに、いくつもの矛盾を抱え、グンダーマンの苦しみと葛藤は広がっていく……。

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そんな複雑さを抱えたグンダーマンだが、本作では「自分の矛盾に苦悩する1人の男」に統合され、リアルな人物として現れる。見事にグンダーマンを体現した主演のアレクサンダー・シェーアは、さらにグンダーマンの楽曲まで歌いこなすという偉業を成し遂げた。決して物真似ではない、労働者や人間としての思いを込めた歌声は、映画と切り離して聴いたとしても、聞き手の心を大きくゆり動かすだろう。

グンダーマンの短い生涯

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本作と史実を元にグンダーマンの人生の一部を整理すると、おおよそ次のようになる。

  • 1955年、東ドイツ・ワイマールに生まれる
  • 1976年〜1984年、シュタージに協力する(21〜29歳頃)
  • 1989年、ベルリンの壁崩壊(34歳頃)
  • 1992年〜、新しいバンドでボーカル(本作の冒頭・37歳頃)
  • 1995年 シュタージへの協力をカミングアウトする(40歳)

そして、グンダーマンは43歳で脳出血が原因で死亡してしまう。肉体労働とツアーを伴う音楽活動の両立という過酷な日々の影響があった可能性が高いという。葛藤の末のカミングアウトからわずか数年後、唐突に彼の人生は閉じられたのだ。

作品ニュース

公開初日@渋谷ユーロスペースで2つの特典!

公開初日5/15、渋谷ユーロスペースでは以下の特典があります。

・監督のオンライントーク開催(14:55の回)

・抽選で、ドイツにちなんだかわいい消しゴムプレゼント

 

『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』見どころ

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  • 互いに人々を監視させた東ドイツの闇
  • 東ドイツ・褐炭採掘場での労働風景
  • 歌ごとグンダーマンを体現した主演アレクサンダー
  • 罪を抱えたグンダーマンと周りの人々の反応

『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』作品情報

【あらすじ】

 東ドイツのボブ・ディランと呼ばれたゲアハルト・グンダーマン。昼間は炭鉱でパワーショベルを運転、仕事が終わると仲間と共にステージに上がり、自作の歌で人々に感動を与え、カリスマ的な人気を博していた。しかし彼は、人には言えない過去を抱えていた。かつて1970 年代、シュタージ(秘密警察)に協力し、バンド仲間や友人たちの行動を報告していたのだ。

 ある時、かつてシュタージに協力した著名人たちが次々と告発されるのをテレビ報道で知ったグンダーマンは、友人たちを訪ね、過去の自分とシュタージとの関わりを告白する。しかし、逆に「俺もお前を監視し、報告してた」と告げられ、驚きと失望に苛まれ……。

監督:アンドレアス・ドレーゼン
出演:アレクサンダー・シェーア(『ソニア ナチスの女スパイ』)、アンナ・ウンターベルガー、アクセル・プラール、トルステン・メルテン、エーファ・ヴァイセンボルン、ベンヤミン・クラメ、カトリン・アンゲラー、ミラン・ペシェル、ペーター・ゾーダン ほか

脚本:ライラ・シュティーラー
音楽:イェンス・クヴァント

原題:GUNDERMANN
字幕・資料監修:山根恵子

配給・宣伝:太秦
提供:太秦/マクザム/シンカ
後援:ゲーテ・インスティトゥート大阪・京都 

<2018年/ドイツ/128分/HD/シネマスコープ/5.1c>
2021年5月15日(土)より渋谷ユーロスペース他全国順次公開

gundermann.jp

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(本ページの情報は2020年6月のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

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