東京・ミニシアター生活

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【9/23公開】『秘密の森の、その向こう』子どものママと出会った森…そこで育まれるひとときの友情と癒し

悲しみにくれるママが姿を消した日に、8歳のネリーが森で出会ったのは自分と同じ年齢の少女。彼女はなぜかママと同じ名前で…。ミステリアスな展開のなか、美しい森を背景に、ゆっくりと心に沁み込むような哀しみと優しさが漂うファンタジー。

監督は「不滅の名作」と絶賛された映画『燃ゆる女の肖像』(2019年)のセリーヌ・シアマ。彼女が再び“女性の深淵”に挑む。娘・母・祖母、三世代をつなぐ喪失と癒しの物語。

2022年9月23日(金・祝)ヒューマントラストシネマ渋谷Bunkamuraル・シネマ 他 全国順次ロードショー!

子どもたちは大人の世界を理解している

主人公は8歳の多感な少女ネリー。大好きなおばあちゃんが亡くなって悲しいけれど、おばあちゃんの娘であるママは、もっと深い悲しみの中に閉じこもってしまう。

ネリーよりずっと長く生きている母の悲しみを、まだ8年しか生きていないネリーは、丸ごと理解することはできないだろう。でも、大人が思う以上に子どもは直感的に、大人の心の状態を感じ取っているものなのだ。

誰もがかつては子どもであったというのに、大人になると、そんな子どもの繊細さをつい忘れてしまうもの。しかし、本作の主人公である8歳のネリーを通して、子どもの頃確かに自分のものであった「大人を見つめる感覚」を、思い出すことができるかもしれない。

本作の脚本をコロナ禍に見直したというシアマ監督。コロナ、戦争、経済格差と世界はさまざま危険であふれている。そんな今だからこそ「子どもたちを大人の輪に入れ、子どもたちに物語を聞かせ、子どもたちと協力することが重要」だと、シアマ監督は考えているそうだ。

実際の姉妹で演じた、ネリーと幼い頃のママ

子どものマリオンを演じるのは、ネリー役のジョセフィーヌ・サンスの実姉であるガブリエル・サンス。この姉妹は、子どもながら本作の物語に感銘を受け、驚くべき熱意を持って演技に取り組んだという。2人は顔立ちも髪型も似ていてまるで双子か、あるいは1人で2役演じているのかと思うほど。

また、息のあった姉妹ということもあってのことだろう、監督は、撮影でリハーサルは行わず、その場その場で即興的に演出する方法にチャレンジしたという。出会ったばかりの2人で秘密の“小屋”を作るシーン、クレープを作るシーンなど、遊びながら一緒にする作業は、本当に楽しそうで、本作の中でも特に印象に残る。

本作の成功は、この姉妹と監督との出会いが大きく影響しているのだろう。

細部までこだわった“おばあちゃんの家”

撮影監督とシアマ監督が「映画全体の配色を考慮しながら決めた」というのが、“おばあちゃんの家”のカーペットや壁紙の色合い。作品の場面を思い返すと確かに、素朴な色ながら、森の緑よりもこの映画のカラーとして目に焼き付いているように感じられた。

他にも照明のスイッチの位置・形、窓のサイズなども、監督の細かな指示のもとで“おばあちゃんの家”は作られているそうだ。

また違う時代を生きているはずのネリーとマリオン、2人の衣装は、本来は時代の差が出てしまいそうであるが、それぞれの世代で共通するデザインを探り当て、一時的な流行などは削ぎ落としているのだという。衣装は似ているデザインでも、観客がネリーとマリオンを混乱しないように「赤」と「青」など、衣装の色でリードする細かな配慮も感じられる。

オススメしたい『秘密の森の、その向こう』

  • 実の姉妹を配役、即興で演じられたいくつもの名シーン
  • 哀しみを抱えた観客をシンパシーで癒してくれる
  • 大人が観るべき、しかし子どものためでもある作品
  • 柔らかな配色の屋内と森の緑など、心に残る色合い

『秘密の森の、その向こう』作品情報

 【あらすじ】
大好きなおばあちゃんが、亡くなってしまった。両親と共に8歳のネリー(ジョセフィーヌ・サンス)はかつて母親が子供時代を過ごした森の中の家を訪れる。祖母が遺した“思い出”を片付けるのだ。自分が書いた子ども時代のノートを手に取り「持って帰るのは気が滅入る」と表情を曇らせる母。慣れないベッドで夜中に目が覚め「さよならを言えなかった」と嘆くネリーを、母は優しく抱きしめてくれる。

翌朝、ネリーはキッチンで朝食を用意する父(ステファン・ヴァルペンヌ)から、母が黙ってどこかへ出て行ったことを知らされ、ショックを受ける。そのまま森を探索していると、ネリーは1人の少女(ガブリエル・サンス)と出会う。「手伝って」と頼まれて一緒に枝を運ぶと、そこには作りかけの“小屋”があった。それは場所も形も、まさに母が子供の頃に作ったとネリーに教えてくれた小屋だった。ネリーが名前を尋ねると、少女は「マリオン」と母と同じ名前を名乗り…。

監督・脚本:セリーヌ・シアマ(『燃ゆる女の肖像』)
出演:ジョセフィーヌ・サンス、ガブリエル・サンス、ニナ・ミュリス、マルゴ・アバスカル ほか
原題:etite Maman
提供:カルチュア・エンタテインメント、ギャガ
配給:ギャガ
<2021年/フランス/73分/カラー/ビスタ/5.1chデジタル>
字幕翻訳:横井和子

2022年9月23日(金・祝)ヒューマントラストシネマ渋谷Bunkamuraル・シネマ 他 全国順次ロードショー!

gaga.ne.jp



©2021 Lilies Films / France 3 Cinéma

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(本ページの情報は2020年6月のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)

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