フランス生まれのジョルジュ・ガショ監督が自ら出演したドキュメンタリー。2019年夏、天に召されたボサノヴァの神様ジョアン・ジルベルトは、人たらしなのに人間嫌いとも言われ、晩年は隠遁生活を送っていた変わり者。ガショ監督は、故人のジャーナリストに替わり、ブラジルを訪ね、生きる伝説(撮影当時)のジョアン・ジルベルトに会うために奮闘する。
2019年8月24日(土)より新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次公開
「どこにいるの?」1冊の本に導かれリオの街へ…
『イパネマの娘』『想いあふれて』など、街中で誰もが耳にしたことのある楽曲を産み出したボサノヴァの神、ジョアン・ジルベルトは、とても謎多き人物。2008年のコンサート以降、公式の場に姿を見せなくなっていた。
彼の音楽にもその存在にも惹かれた、ドイツ人ジャーナリストのマーク・フィッシャーは、かつてジョアン・ジルベルトに会うため、リオ中を訪ね歩き、結局会うことが叶わなかった。その旅の体験を、著作「Ho-ba-la-lá: À Procura de João Gilberto(オバララ ジョアンジルベルトを探して)」に綴っている。詩的な文章を伴った記録だ。
マーク・フィッシャーはブラジルへの旅の3ヶ月後、本が出版される直前で40歳にして早い死を遂げる(自殺とも言われている)。こうして、ジョアンを追っていたマーク本人まで、謎の人物となってしまった。
この著作本を手に取り、その内容に共感したフランス人のジョルジュ・ガショ監督は、マーク・フィッシャーの足跡をたどりながら、ジョアン・ジルベルトを探す旅に出る。
本作に記録されたガショ監督の旅は、人嫌いのジョアン・ジルベルト、そして故人のマークという二重の存在を追う旅になる。
ジョアンとの対面を叶えることにすら不安を感じながら、熱に浮かされるようにリオを彷徨った、強迫的な感情を抱えたジャーナリスト、マーク…。旅で多くの人と出会う中、ガショ監督はジョアンの存在を近くに感じながら、マークの心理にも迫っていく。
魅惑のボサノヴァと豊かな風景に満ちた旅
レコード、BGM、生演奏と、本作には常にボサノヴァの楽曲が流れている。気楽に心地よく聴くこともでき、熱い想いを込めれば心の底まで響くのが、ボサノヴァの素晴らしさだろう。
本作の音楽は、熱心なボサノヴァファンはもちろん、ボサノヴァはなんとなくしか知らないが…というかたでも存分に楽しめる。
また、サンパウロに次ぐブラジル第2の都市、リオ・デ・ジャネイロの素晴らしい景色も観どころ。コパカバーナビーチ、イパネマ海岸。広々とした風景は開放的で、目にも快楽。リゾート感溢れる旅気分を、心地よく味わえる。
魅惑的な人々が次々と現れ、ついに…
本作には、ジョアン・ジルベルトと縁の深い関係者、因んだ人物、さらにマークが旅の中で出会った人々など、多くの人物が登場する。歌手でありジョアン・ジルベルトの元妻ミウシャ(画像右)、ジャーナリストのマークの旅をアシスタントした女性ハケル(画像左)、ジョアン・ジルベルトの友人でもある元マネージャー、毎日ジョアン・ジルベルトの食事を作った(けれど本人には会ったことのない)料理人、専任の美容師。
さらにミュージシャンも多く登場し、ジョアン・ジルベルトの人柄や音楽について語ったり、ギターを鳴らし歌ったりもしてくれる。ジョアン・ジルベルト公認のものまね歌手までも登場。
どの人も魅力的で、話が面白い。トーク力もさることながら、変わり者と言われるジョアン・ジルベルトの妙なエピソードが次々飛び出して、期待は裏切られない。結婚秘話やバスルームでの音楽制作、そして「料理の内容を電話で延々と説明させられて…」等々の日常まで。じわじわとジョアン・ジルベルトの人物像が頭の中に浮かんでくる。
やがて、ガショ監督がジョアン・ジルベルトに接近する機会が突然やってくる。元妻ミウシャがかかってきた電話に出ると、なんとその相手はジョアンだというではないか!端末越しに、 彼の声が漏れてきて…。
作品ニュース
来場者、ブラジルのお守り、ボンフィン・リボンをプレゼント。
YEBISU GARDEN にて、入場者プレゼントを実施。
オススメしたい『ジョアン・ジルベルトを探して』
- ボサノヴァの音楽溢れる111分
- 魅力あふれる人物が次々に登場
- ブラジルの美しい街を堪能できる
- マークの著書の内容にも触れられる
- 明るさと優しさに潜む物憂い薄闇も
音楽と旅に出たように観られる本作。ただ開放的なリゾートというだけではなく、いろいろ考えながら楽しむことができる、知性的な作品でもある。
『ジョアン・ジルベルトを探して』作品情報
【あらすじ】
類稀なるギター演奏と甘美な歌声で、世界を魅了したボサノヴァの神様、ジョアン・ジルベルト。10年以上、公の場に姿を現していない彼に会いたい一心で、ドイツ人のジャーナリストとフランス出身の映画監督が、彼を知る人物をたずね、時空を超えて、リオの街をさまよい歩き…。
監督:ジョルジュ・ガショ
出演:ミウシャ、ジョアン・ドナート、ホベルト・メネスカル、マルコス・ヴァーリ ほか
原題:Where Are You, João Gilberto?
配給:ミモザフィルムズ
<2018年/スイス=ドイツ=フランス/ドイツ語・ポルトガル語・フランス語・英語/111分/カラー/ビスタ/5.1ch>
字幕翻訳:大西公子 字幕監修:中原仁
後援:在日スイス大使館、在日フランス大使館、アンスティチュ・フランセ日本、ブラジル大使館
協力:ユニフランス 配給:ミモザフィルムズ 宣伝協力:プレイタイム
2019年8月24日(土)より新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次公開
©Gachot Films/Idéale Audience/Neos Film 2018
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(本ページの情報は2019年8月時点のものです。最新の配信状況は U-NEXT サイトにてご確認ください。)