東京・ミニシアター生活

主に都内のミニシアターで上映される新作映画の紹介をしています。

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【11/8公開】『夕陽のあと』たった1人の子を求める、貧困に追い詰められた母と血の繋がらない母

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鹿児島の港町・長島町の有志が立ち上げた「長崎大陸映画実行委員会」企画によるヒューマンドラマ。郷愁を誘う港町を背景に、2人の人気実力派女優、貫地谷しほりと山田真歩が、1人の子どもを巡って対立する母親役をそれぞれ熱演する。犯罪につながる悲惨な貧困母子家庭や、未だ広く知られていない里親制度といった“家族”に関わる社会問題に切り込んでいく、骨太な作品だ。

2019年11月8日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー

2人の母にとって唯一無二の子ども

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血の繋がりはないが、物心つく前から共に暮らし、慈しんできた子ども。ところがいざ特別養子縁組(法的にも実子と同様になる)の手続きを始めると、突然、その子を捨てたはずの実母が登場する。しかも驚くことに、その人は顔馴染みの女性だったのだ。

彼女は時間をかけ、用意周到にひっそりと忍び寄ってきていた。実の親子以上に絆が固まった里子を奪われるかもしれない不安と恐怖…こう考えると、ホラーじみた物語にもなりそうだ。しかしそれは、里親である母から一方的に見た状況である。

もう一方の実母側には、また別のストーリーがある。それがどんな理不尽なものだったのか、そして息子を手放し彼女が島に来るまでの間に何があったのか、彼女の犯した罪はなんなのか…隠されていた事情が、ミステリーのような展開で明らかにされるので、グイグイと引き込まれる。

母親になりたい、あるいはすでに母親である2人の女。どちらにとっても唯一無二の存在であるたった1人の子ども。どちら側から見ても身を裂かれるようなこの問題を解決する手立てはあるのだろうか。 それを観客と一緒に手探りしていく。痛みとともに心にしみ入る作品だ。

貫地谷しほりと山田真歩、2人の女優それぞれの魅力

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愛しさがあふれながらも、時を経て我が子にどう接していいのかわからなくなってしまった実母の茜(貫地谷しほり)。そして、血の繋がらない子に実の母ほどの愛情を込めて育ててきた里親・五月(山田真歩)。

貫地谷しほりも山田真歩も、今まで母親役というイメージがなかっただけに、新鮮なキャスティングだ。対照的な2人の女性を、全く違う個性をもつ2人の女優が、全身全霊で演じ、ぶつかり合う。影のある儚げな貫地谷しほりと、たくましい港町のお母ちゃん山田真歩というキャラクターも珍しく感じる。

「どうしても母親としてこの子と一緒に暮らしたい」という、それぞれの女性の切実なる思いが、エゴと愛の間で揺れる。彼女たちが葛藤する姿は、観ている者の胸にズシンとストレートに響く。

日野五月の家族・夫と義母は、永井大と木内みどりが演じている。港町で暮らしてきた日野家の人々は五月同様に愛情深い。コミュニティの協力も得られていて、特別裕福ではないが、子どもを育てるのに理想的な優しさ溢れる家庭だ。

一方、茜は単身で島にやってきて食堂で働きながら暮らしているが、経済力も家族も夢もなく、かつて手放した息子と、再び一緒に暮らすという望みだけにすがってなんとか生きている。

どちらの愛情が強いのか、7歳の少年がどちらと暮らすべきなのか。それは決して第三者が単なる理詰めや正義で判断を下してはならない問題なのだと、この物語は少しずつ気づかせてくれる。

鹿児島県最北端の町から、地域の熱量を伝える

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本作は、舞台となる鹿児島県・長島町の有志が企画した作品。「町を知ってもらいたい」という思いを受け、地元愛溢れる風景が映像にたくさん映り込んでいる。

長島町は、養殖ブリの漁業だけでなく、農業や畜産業も盛んで自給率100%超えという、魅力溢れる地域。子どもたちが祭り太鼓を練習するシーンや日常的に声がけをしている風景があり、この町のコミュニティの結びつきの強さが見えてくる。「町の大人みんなで子どもを育てる」令和のご時世にもそんな気概がある町が存在することがわかる。

出生率が高い地域でもあるにも関わらず、長島町でも過疎化は徐々に進んでいるという。子育てを考え、この地を次世代へ繋いでいきたいという思いから、この企画が立ちあがったのだという。ゆえに、美しい風景にとどまらず、町の性質までも作品に収められているのだ。また、2人にとっての息子である豊和(とわ)役を演じる少年も、この島の住人からオーディションで選出されている。

ローカルな港町を舞台に、現代の子育てをテーマとして組み合わせ、郷愁を誘う、切なくも心豊かな感動作が完成した。

作品ニュース

鹿児島の港町地元の応援

作品を観ると、舞台である鹿児島の港町・長島町の風景、そしてその暮らしぶりも身近になってくる。町の協力無くしては完成しなかった本作は、長島町の人々からも愛されている。

 

「町に育てられた」越川道夫監督インタビュー

越川道夫監督のインタビューが、シネマジャーナルwebに掲載されている。撮影の舞台裏や、監督の作品への思いなどがよくわかる。まっさらな状態で作品を観たい方には、作品を観た後で読むことをおすすめしたい。

 

オススメしたい『夕陽のあと』

  • 様々な社会的テーマに向き合える
  • 貫地谷しほり、山田真歩の熱演
  • ミステリーのように展開する物語
  • 鹿児島の豊かな港町を身近に感じる

貧困母子家庭、不妊、養子縁組、現代の子育て、地方の過疎化、と多くの社会問題が盛り込まれている。また、なんといっても貫地谷しほり、山田真歩ら主演2人をはじめとするキャスト真摯な演技で、クオリティの高いストーリーが味わえる。

『夕陽のあと』作品情報

【あらすじ】
鹿児島県最北端の長島町。島で生まれ育った日野五月(山田真帆)は、不妊治療を断念し、家業を継いだ夫の優一(永井大)、義母のミエ(木内みどり)、7年前里子になった豊和(とわ/松原豊和)と平穏に暮らしていた。いよいよ特別養子縁組をしようと手続きを進める中で、驚くべき事実が発覚する。豊和は乳児置き去り事件の被害者であり、しかも実母は1年前から近所の食堂で働いている佐藤茜(貫地谷しほり)だったのだ。それを知った五月は心を乱して…。



監督:越川道夫(『海辺の生と死』)
出演:貫地谷しほり、山田真歩
   永井大、川口覚、松原豊和、木内みどり、
   渡辺早織、鈴木晋介、宇野祥平、滝沢涼子 ほか

脚本:嶋田うれ葉 音楽:宇波拓
企画・原案:舩橋淳 プロデューサー:橋本佳子 

長島町プロデュース:小楠雄士 製作:長島大陸映画実行委員会
制作:ドキュメンタリージャパン
配給:コピアポア・フィルム


<2019年/日本/133分/カラー/ビスタサイズ/5.1ch>
2019年11月8日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー

yuhinoato.com

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© 2019長島大陸映画実行委員会

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