北朝鮮に実在する政治犯強制収容所の恐るべき実態を描くアニメーション。父にかけられた容疑のせいで、ある日突然、収容された日系の少年ヨハンと、その妹・母。地獄のような長い収容所生活でも希望を捨てず、人間らしく生きようとする彼らを通し「生きる」意味とは何かを問う、衝撃の人間ドラマ。また、監督の清水ハン栄治氏曰く「声なき人々の声となることを目指すプロジェクト」でもある。
2021年6月4日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開
徹底したリサーチを元に制作
今も秘密のベールに包まれた北朝鮮。その暗部である、政治犯強制収容所の内部を描いた本作。制作にあたっては、まず、清水ハン栄治監督がすでに発表されている、脱北した人々の体験談・映画・ニュースなどを洗いざらい探った。
さらに、韓国・日本・アメリカで、収容されていた人々・元看守・脱北者にインタビューを決行し、各国の人権団体、NGOにもあたって情報を収集。本作に登場する、人権を無視した強制収容所の過酷な労働、拷問、処刑、強姦などの悲惨な出来事についてヒアリング。ちなみに、日本から拉致された女性の死も描かれる。徹底したリサーチのもとで再現された強制収容所は、実在のものにかなり近いはずだ。
また本作では、ヨハン、ミヒ、ユリの家族愛や、友人インスとの友情、さらに収容されている人々との心の交流などのエピソードについても、体験者たちのヒアリングの元に描いているのだという。
目を覆いたくなるような悲惨な真実が山ほど描かれている本作だが「過酷な環境の中にあっても、希望を捨てず、人間らしく美しく生きる人々の存在」もまた、真実であると伝えている。
アニメーションという表現を選んだ理由と、その造形について
伝記漫画シリーズをプロデュースした経験を通じ「漫画化すること」で、興味を持つ人々の層が思いがけないところまで広がることに感銘を受けた、という清水ハン栄治監督。ゆえに本作をアニメーションで表現することにした。しかし、一言でアニメーションといっても、様々な造形が存在する。そこで「デフォルメしすぎず、リアルすぎず、というバランスに苦心した」とインタビューで答えている。
確かに、3Dアニメーションとはいってもツルツルした質感ではなく、カクカクとした(折り紙のような)素材感になっているのが、作品の内容を伝えるのにとても適している。本作は、そうした工夫が重ねられたアニメーションなのだ。
割り切れぬ思いこそが、声なき人々の声となる
タイトルの『トゥルーノース』には2つの意味が込められている。1つには「絶対的な羅針盤」という英語の慣用句で「人として進むべき方向・生きる真の目標を失うまい」とする、本作の人物たちの生き様を指す。
そしてもちろん、もう1つは政治犯強制収容所という「報道されることのない北朝鮮の真実」という意味である。
「声なき人々の声となることを目指すプロジェクト」だという本作。作品のためにヒアリングが行われたのは、すでに強制収容所を脱した人々の話だ。脱することができた人もいる一方で、もちろん脱出がかなわなかった人々が数多く存在しているということだ。今もなお、北朝鮮で苦しんでいる人、それが声なき人々だ。
この作品を観て、彼らに想いを馳せれば、やりきれぬ心持ちになるだろう。今すぐに起こせる行動は見つからないかもしれない。それでもとにかく「知ること」が大切な第一歩だろう。それが、今も苦しみ続けてる人たちの、微かな希望に結びつく。観客に残された割り切れぬ思いこそが、声なき人々の声への芽となることを信じたい。
作品ニュース
音楽監督のマシュー・ワイルダーのメッセージ
音楽監督のマシュー・ワイルダーのメッセージが、ツイッター公式アカウントで視聴できる。監督への敬意、作品への思い入れなど熱い想いが受け取れる。
「#トゥルーノース」音楽監督マシュー・ワイルダーのメッセージ動画&音楽シーン映像を解禁いたしました。https://t.co/iqxijrbd7m #マシュー・ワイルダー #ムーラン
— 映画「トゥルーノース」公式 (@truenorthmovie) June 2, 2021
映画『トゥルーノース』のみどころ
- 北朝鮮に実在する「強制収容所」の内部を描く
- 細部までリサーチ、ヒアリングされたリアルさ
- 残酷な描写もホラーにしないアニメの造形
- 過酷で理不尽な環境の中、人が生きる意味を問う
『トゥルーノース』作品情報
【あらすじ】
1960年代「在日朝鮮人の帰還事業」で日本から北朝鮮に移民し、平壌で幸せに暮らしていたパク一家。しかし政治犯の疑いをかけられた父が逮捕され、幼い兄妹ヨハンとミヒ、母ユリは、突如悪名高き政治犯強制収容所に送還されてしまう。
収容所では母を公開処刑され孤児となった少年インスと出会い、生活を共にするようになる。過酷な生存競争の中、青年へと成長したヨハンは次第に純粋で優しい心を失い他者を欺く一方、ユリとミヒは人間性を失わず倫理的に生きようとして……絶望の淵で人は「生きる意味」を見つけられるのか?
監督・脚本・プロデューサー:清水ハン栄治(「happy - しあわせを探すあなたへ」プロデューサー)
声の出演:ジョエル・サットン マイケル・ササキ ブランディン・ステニス エミリー・ヘレス ほか
制作総指揮:ハン・ソンゴン
制作:アンドレイ・プラタマ
音楽:マシュー・ワイルダー
配給:東映ビデオ
<2020年/日本・インドネシア/94分/カラー/英語/日本語字幕>
2021年6月4日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開




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