東京・ミニシアター生活

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【4/29公開】『不都合な理想の夫婦』ジュード・ロウの新境地、転落する成功者の姿がリアルな心理スリラー

80年代にアメリカでビジネスを成功させた英国人男性が、さらなる野心をむき出しに家族を引き連れ4人で母国へ凱旋。しかしそれを機に成功とは裏腹の運命を辿り始める。愚かな男性像にガッチリハマった主演ジュード・ロウの“新境地”と評価が高い心理スリラー。曇天に馬駆ける古城など、不穏ながらも美しい風景も印象的だ。

2022年4月29日より、kino cinéma横浜みなとみらい ほかにて全国順次公開

“仕事ができる野心家”が堕ちていく様を魅せるシュード・ロウ

「ジュード・ロウって、こんなにも嫌な奴で、惨めな存在だったのか!」などといつの間にやら混乱してしまうほどに、ピッタリと主人公の男を身にまとったジュード・ロウ。そんな彼をずっと見つめ続けることになる本作。

端正な造作に年齢が刻まれた顔には自信たっぷりの表情、そして尊大な振る舞い。初めはサマになって見えるのだが……やがてこの自信が「ホントのところは根拠ナシ」という事実が少しずつ漂ってくる。そして彼の敵意はむき出しなり、言葉の空回りも加速していく。

皮を1枚ずつ脱いでいくように、少しずつ見えてくる主人公ローリーの実体。不愉快な人物像がなぜかクセになる。決してプラスの魅力ではないはずなのに、惹きつけられてしまうのだ。

夫婦と親子の間で鳴り響く軋み 確実にズレてく見事なやりとり

アメリカからロンドンに渡ることになった一家。それを機にローリーの仕事を始め、アリソンとの夫婦関係や子どもたちとの親子関係も少しずつ破綻していく。

対外的な出来事や些細な家族間の口論によって摩擦が生まれ、家族関係や個人の心情に影響していくのだが……それが計算されたパズルのように、1シーンごとに、かちりかちりと確実に何かがハマっていく、あるいは何かが外れていく。

そこで生まれる疑い、失望、怒り、悲しみ。その全てのプロセスがみどころと言える。本作の脚本や演出には、驚くほど見事に「ムダ」や「余り」がない。最初から最後まで、スクリーンに釘付けにされる。

外国移住に、古城に持ち馬…なのに、あるある感が満載

本作の舞台は86年の米国&英国。資本主義に夢中になった多くの野心家が、成功をつかもうとギラギラしていて、アメリカは「自由の国」でありイギリスは「伝統の国」という明確な差があった。こうした時代背景、米国と英国の価値観の違いが、この一家の破滅に拍車をかける。

一家は海外に移住し、新居は古城、妻のライフワークの調教・乗馬のために持ち馬までいるという(破綻していくのだが)セレブ生活。日本在住の庶民である現代の我々からは遠い存在でありながら、時代や土地柄といった背景が丁寧に盛り込まれているので、一家の状況が手に取るようにわかって「あるある」にすら見えてくる。

また、古い城、敷地内を駆ける馬、華美な内装の高級レストランと、どれも絵になる風景だが、イギリスの曇り空もあって、常に重苦しい不吉な香りが醸し出されており、心理的に圧迫される。そんなダークな映像美も、好みの人にはグッと刺さるだろう。

オススメしたい『不都合な理想の夫婦』

  • 新境地と評判、ジュード・ロウの存在感
  • 人物は少なくシンプルな人間関係で展開
  • 米国→英国移住で夫婦バランス崩壊
  • 曇天に古城・乗馬…ダークで美しい風景

嫌〜な悪夢がどこまでも続く一家のいく末は?……しかし意外にも結末には一筋の光明が……。

『不都合な理想の夫婦』作品情報

 【あらすじ】
1986年。NYで貿易商を営む英国人のローリー(ジュード・ロウ)は、米国人の妻アリソン(キャリー・クーン)と、息子と娘の四人で幸せに暮らしていた。満ち足りた生活を送っているように思えたが、大金を稼ぐ夢を追って、好景気に沸くロンドンへの移住を妻に提案する。かつての上司が経営する商社に舞い戻ったローリーは、その才能を周囲から評価され、復帰を歓迎される。プライベートではロンドン郊外に豪邸を借り、息子を名門校に編入させ、妻には広大な敷地を用意。それはまるで、アメリカン・ドリームを体現した勝者の凱旋のようだった。

しかし、ある日、アリソンは馬小屋の工事が進んでいないことに気付く。業者に問い合わせると、支払いが滞っており、更には驚くべきことに新生活のために用意をしていた貯金が底を突いている事を知ってしまい……。

監督:ショーン・ダーキン
出演:ジュード・ロウ、キャリー・クーン、ウーナ・ロッシュ、チャーリー・ショット、アディール・アクタル、アン・リード、マイケル・カルキン ほか
原題:The Nest
提供:木下グループ 配給:キノシネマ
<2019年/イギリス/英語/107分/カラー/ビスタ/5.1ch/R15+>
字幕翻訳:高山舞子 
2022年4月29日より、kino cinéma横浜みなとみらい ほかにて全国順次公開

©Nest Film Productions Limited/Spectrum Movie Canada Inc. 2019

場面写真=Dean Rogers

movie.kinocinema.jp


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