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【1/20公開】『エンドロールのつづき』物語と光でできている「映画」への憧れが少年の運命を切り開く

「映画に恋した」9歳のチャイ売りの少年が、映画作りを夢見るようになっていく……インド版「ニュー・シネマ・パラダイス」との評判も高い、パン・ナリン監督の自伝的作品。敬愛する巨匠監督たちへのオマージュを散りばめた、映画ファンへの目配せも満載。インドに根強く残る身分制度や、貧困問題を背景に、片田舎の少年が映画と出会い、自身の運命を大きく変えていく希望の物語。

2023年1月20日(金)新宿ピカデリーヒューマントラストシネマ有楽町シネ・リーブル池袋ほか全国公開

映画に恋した少年の成長物語

インドの田舎町で学校に通いながら父のチャイ店を手伝っている、9歳の主人公サマイ。父はバラモン(カーストの最高階級)という高貴な出身ながらワケありの苦労人で、“低俗”な映画を嫌っている。そんな父が、敬愛する神がテーマの作品だという理由で「これが最後だ」と言いながら、珍しく家族を連れて映画館へ出かける。

インド映画独自のアクション、歌や踊りに台詞回し……暗闇の中で光が映し出す迫力いっぱいのめくるめくシーンに釘付けになり、サマイは映画に恋してしまう。そんな映画との出会いをきっかけに、サマイは自分の可能性をどんどん広げていくことになる。

母の料理、故郷の風景

監督の実体験を基にしているという本作。監督の故郷であるグジャラート州にあるカティアワルという田舎町での子ども時代を描いている。故にこの地方の方言が話せて、大自然の中で生きてきたことを無理なく表現できるよう、子役は「地元で暮らしてきた子どもであること」がキャスティングの条件だったという。

なるほど「何もないところから工夫してモノ作りをする感覚」という説得力があり、大自然の中での無邪気な振る舞いも馴染んでいる。近距離でライオンを見物する様子も楽しく、背景の自然も美しい。

また、美しく優しいサマイの母が作る料理は、とても魅力的に映る。たくさんの調味料やカラフルな野菜を使って調理する鍋の中身の美味しそうなこと。これらも監督自身の少年時代に思いを馳せてのことだろう。

ちなみに、サマイたちがフィルムを盗み出し、観客がヒヤヒヤするエピソードも、監督の幼少期にやってしまったという実話なのだそうだ。

名作映画と監督、そして「光」そのものへのオマージュ

リュミエール兄弟、キューブリック、タルコフスキー……数々の巨匠監督たち、そして名作映画へのオマージュが、パン・ナリン監督自身からの目配せのように本作のあちこちに登場するのも楽しい。監督の映画愛が溢れてくるようだ。

また、本作でサマイが映画の「物語」に夢中になるのと同時に、映画の物理的な「光」にも焦がれているのが、とても重要に感じられる。サマイ少年にとって「光を捕まえる」ことが「映画作ること」の始まりなのである。

元来、映画は映画館でしか観られないものであった。現代ではインターネットの「コンテンツ」として扱われがちな映画作品だが、そもそも映画とは、フィルムを回して、光によってスクリーンに映し出される上映が原点である。サマイたちが「光を捕まえよう」と工夫する様子は印象深く、映画の「光」そのものへの敬意も感じられる。

入手したフィルムを使ってもうまく動画を映し出すことができず癇癪を起こしていたサマイは、映像技師のファザルの説明を聞きながら、映画の物理的な仕組みを理解していく。やがてサマイの熱意は、仲間や村の人々へと広がっていく。そして、ついに映画嫌いの厳格な父が、そんな変化に気づいてしまい……。

作品ニュース

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オススメしたい『エンドロールのつづき』

  • インドの田舎町の、懐かしくも美しい風景
  • 随所に散りばめられた、巨匠監督たちへのオマージュ
  • 映画が「光の芸術」であることを思い出させてくれる
  • 監督の体験を基にした少年の成長物語

『エンドロールのつづき』作品情報

 【あらすじ】
9歳のサマイはインドの田舎町で、学校に通いながら父のチャイ店を手伝っている。厳格な父は映画を低劣なものだと思っているが「信仰するカーリー女神の映画は特別」と、家族で街に映画を観に行くことに。人で溢れ返った映画館、席に着くと、目に飛び込んだのは後方からスクリーンへと伸びる一筋の光…そこにはサマイが初めて見る世界が広がっていた。映画にすっかり魅了されたサマイは、再び映画館に忍び込むが、チケット代が払えずつまみ出されてしまう。それを見た映写技師のファザルがある提案をする。料理上手なサマイの母が作る弁当と引換えに、映写室から映画をみせてくれるというのだ。サマイは映写窓から観る色とりどりの映画の数々に圧倒され、いつしか「映画を作りたい」という夢を抱きはじめるが……。

監督・脚本・美術:パン・ナリン
出演:バビン・ラバリ、リチャー・ミーナー、バベーシュ・シュリマリ、ディペン・ラバル、ビーカス・バータ ほか
原題:Last Film Show
配給:松竹
<2021年製作/112分/G/インド・アメリカ・フランス合作>
2023年1月20日(金)新宿ピカデリーヒューマントラストシネマ有楽町シネ・リーブル池袋ほか全国公開

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